サステナビリティ | マース ジャパン
A Conversation With Barry Parkin

マースのサステナビリティ・健康・ウェルビーイング
最高責任者

バリー・パーキン

チーフ・プロキュアメント・アンド・
サステナビリティ・オフィサー

Sustainable in a Generation(SiG:次世代に向けた持続可能な 環境整備プログラム)は、グローバルで事業を展開するマースが、漸進的な改善を超えて人と地球に利益をもたらす体系的 変化を引き起こすために取り組むべき計画です。マースは、必要性に基づいて長期的な目 標とコミットメントを設定し、プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)及びソーシャ ル・バウンダリー(社会の限界)の範囲内で活動する上で利用できる最適な科学技術を活 用することで、真に持続可能な企業となっています。

ここではマースが挑戦的な目標に向けて、どのように世代を超えた旅を始めたのか、詳し くお伝えしたいと思います。拡張サプライチェーンを通じてインパクトを加速するために どのように変革し始めているか、どの分野ですでに進捗の兆しが見え始めているか、最大 級の課題に対する新たなアプローチを試すために外部とどのように協力しているかについ て説明します。

拡張サプライチェーンの変革

マースが残してきた社会的、環境的、経済的な足跡の本質を理解するため、拡張サプライ チェーンのマッピングに過去5年間の大半を費やしてきました。これにより、マースが及 ぼした影響と課題の大半は、世界中から調達している原材料を通じた農業に関するものだ と分かりました。この知見に基づき、まず、社会問題及び環境問題の約80%を占める、 米、魚、牛肉、大豆、パーム油、パルプと紙、カカオ、ミント、乳製品、サトウキビなど 10種の原材料を重点化しました。そして昨年は原材料ごとの新しい変革的な調達戦略を策 定したことで、温室効果ガスの排出、水ストレス、土地利用、人権、所得といったサステ ナビリティの課題に取り組むことができ、同時に調達の安全性を向上させ、競争力のある サプライチェーンを維持しています。この取り組みは、これからの数年間で大きく姿を変 えたサプライチェーンに結実していくと考えています。

このサプライチェーンの変革はコモディティと呼んでいた原材料の大半において必須だ と考えています。実際、原材料をよく知らない供給元から調達し、純粋に取引ごとの価 格ベースで購入するコモディティの時代は終焉を迎えていると思います。将来的には価 格とサステナビリティへの影響を見比べながら、顔が見える供給元、多くの場合はよく 知っている農場から、少数のサプライヤーとの長期的なパートナーシップに基づいて調達 することになるでしょう。

進捗状況に関する初期段階の指標

現時点で、直接関わっている事業活動を再生可能な電力の供給のみで運営している 国は、2016年の4ヵ国から9ヵ国に増加しました。長期的な国レベルの契約へ投資 することで、再生可能な電力はビジネスに有効だというメッセージを市場に発信し ながら支出削減ができています。

確立された原材料プログラムについては、現在いくつか加速中です。たとえば、バ スマティ米の調達先をパキスタンに移行するため、600以上の農家や農業団体と提 携しました。マースが提供した最初の支援活動によって、水の使用量の30%削減、 農家の収入の32%向上、事業コストの削減が達成できました。これこそ、私たちが 調達戦略の変革で目指しているwin-win-win(三方得)の典型例です。

2017年には、99%のパーム油のトレーサビリティをミルレベル(最初の処理段 階)で達成し、マースのビジネスへの供給地域を特定することで森林破壊や人権問 題のリスクを評価できるようになりました。この知見を生かして、パーム油のサプ ライチェーンを徹底的にシンプルなものにし、既知の検証済み供給元から購入する 拡張サプライチェーンの変革取り組みという、より深い変革を始めることができます。

さらなる挑戦のためのパートナーシップへの投資

競争前段階におけるパートナーシップが必要な変革を相応の規模でもたらすために極め て重要であることは熟知していましたので、過去1年間、マースは既存パートナーシップ の構築と新たなパートナーシップの開始に重点的に投資してきました。

重要なパートナーシップとしては、2015年にダノン社等と共同設立した Livelihoods Fund for Family Farming(小規模農家を支援する投資基金)があります。この基金は、 小規模農家の収入を改善するための持続可能な農業プロジェクトの開発に1億2,000万 ユーロを投資し、食糧の安全保障に取り組むと共に生態系を回復させるものです。この投 資基金を通じて、20万の農家にポジティブな影響を与えることを目指しています。この 分野で1年以上取り組んでいるプロジェクトが現在のところ3つあり、これ以外に4つの進 行中のプロジェクトがあります。私は最近、最初のプロジェクトであるマダガスカルのバ ニラ農家との共同プロジェクトを訪問する機会がありました。プロジェクト発足からわず か1年しか経っていませんが、栽培手法を改善し、サプライチェーンの次の段階に関与さ せたことで、この基金のアプローチが現場に具体的な変化をもたらし、農家の収入を 300%以上も増加させる見込みであることが明らかになっています。マースの10年にわ たる調達の取り組みは、彼らが確信をもって投資できることを意味し、最大3,000人の生 産者と約12,000の家族の豊かな暮らしの実現に向けて順調に進んでいます。

私たちが直面している最大の課題の1つは、農業の拡大による森林減少です。カカオに関 してはガーナとコートジボワールにおける森林破壊を終わらせるため、世界カカオ財団 (World Cocoa Foundation)を通じ、同業者と協力してCocoa and Forests Initiative(カカオと森林イニシアチブ)という画期的な官民パートナーシップを構築し ました。政府と業界の確固たる取り組みと投資を通じて、このイニシアチブはこれらの 国の農業に起因する森林伐採を中止させる可能性を秘めており、他の国や他の原材料で も可能な事例として機能します。

マースは、代表的な人権団体である Verité と新たな長期戦略的パートナーシップを立ち 上げ、私たち自身の事業を通じて、一次サプライヤーと共に、そして拡張サプライ チェーンの末端に至るまで、協働して取り組みを促進し、人権プログラムの影響を強化 しています。また小規模農家の収入を増やす方法を見極めるための共同 think-do tank であるFarmer Income Lab(農家収入研究所)を立ち上げました。この研究所が、オッ クスファム(Oxfam)、ヴァーヘニンゲン大学(Wageningen University)、ダルバー ググループ(Dalberg Group)と協働して行った最初の研究がもうすぐ発表される予定 です。

もう一つの非常に重要なパートナーは、New Plastics Economy(プラスチックを取り巻 く新たな世界経済システムの構築)における初期のパートナーであるエレン・マッカー サー財団(Ellen MacArthur Foundation)です。私たちは2025年までに100%リサイク ル可能なパッケージを目指すという目標を通じて財団の取り組みを支援しています。な るべくプラスチックを使わない包装を使用し、プラスチック包装の廃棄物を削減し、プ ラスチック包装のリサイクル率を高めることは、私と私のチームの最優先事項です。こ の分野でやるべきことがたくさんあることは認識していますので、進捗の加速に向けて 投資とリソースを増やしています。

水ストレスについては、パキスタン、スペイン、米国において、注力している原 材料である米を中心にいくつかの進展がありました。英語版のレポートの11 ページで、この地域における私たちの取り組みが、どのように2017年に地球上 の全人類の一人につきコップ2杯分の水の節約につながったかについて、詳細を 記しています。順調なスタートを切りましたが、やるべきことはまだまだありま す。また、気候変動が世界中の調達先の地域に影響を与え続ける中、私たちが直 面するリスクは増加しています。

「Nourishing Wellbeing(ウェルビーイングの充実)」のための取り組みとして は、厳格な第三者監査を含む、マースのマーケティングコードへの準拠を測定す る強化された仕組みを展開することで、責任あるマーケティングに関する業界最 先端のアプローチの構築を継続しています。この分野におけるマースのリーダー シップは、2018年 グローバルATNI(Global Access to Nutrition Index︓消費 者の栄養状態改善に向けた取り組みを評価する格付け)のマーケティング部門で 第1位にランクされたことで公に認められていますが、より高い業界標準を目指 し、特に新興分野であるデジタル自主規制を中心に同じ考えを持つさまざまな パートナーと協働しています。

消費者のウェルビーイングを支えるための製品提供の改善と拡大に向けた取り組 みでも進捗がありました。より自然な原材料を求める消費者のニーズに応えるた め、技術革新への多大な投資に注力し、特に、新たな天然色素の開発と複数の市 場における規制当局の承認を推進しています。

これらのイニシアチブと、とりわけアソシエイト(従業員)の健康とウェルビー イングを支援するための社内プログラムを通じて、グローバルATNIスコア全体 で55%上昇を達成し、2016年の3.6点(10点中)から2018年には5.6点とする ことができました。

マースのSiG計画はビジネス目標に直結しているため、野心的目標の実現に向け て最初の3年間で10億ドル以上を投資しています。計画の完全な実現には数十 年かかるでしょうし、いくつかの目標については早い段階での急速な進展が見 られないかもしれません。しかし、私たちは強い意思をもって自ら選択した道 を進んでいます。この最初の年には原材料のサプライチェーンの変革を開始 し、既に軌道に乗っている部分を加速させ、重要なパートナーシップを構築し て投資し、新たなアプローチを試みてきました。今後数年間には活動の大幅な 拡大と具体的な効果が見られることでしょう。


バリー・パーキン